それは悪魔の植物

  イタドリは日本の在来植物で、背丈はせいぜい2m位までです。ところがイギリスでは3mを超えるほど巨大に成長するそうです。

 持ち前の強力な繁殖力と成長力で野原や河川敷はもちろんのこと、至る所を席捲、アスファルトを突き破り庭園を破壊し、ついにはレンガ積みの塀や家屋まで壊してしまっているのです。

 日本でも根絶が難しい草なのですが、イギリス程の猛威はありません。それには理由があるのですが、それは後程お話しします。

 

 イギリスでは、あまりに強力な破壊力のため、イタドリがある土地は価格が下がってしまうので、不動産を売却する時はイタドリがあるかどうかを申告する義務があるのです。「ホンマかいな?」と思うような話ですが、本当のことです。

 イギリスに住む日本人の話だと、2013年からは庭に生えてきたイタドリをそのままにすると違法となり、処罰の対象になるそうです。 

 

 イタドリは幕末にシーボルトがヨーロッパへ持ち帰ったものですが、200年近くたった今になって大変なことになってしまったのです。当初は観賞用としてよろこばれたようですが、もはや手に負えなくなってしまったのです。

 イギリスに根付いてから妙にパワーアップしてしまったイタドリですが、その嫌われ方は鳥インフルか豚コレラ並み。有史以来最悪の外来種植物とされ、「悪魔の植物」と呼ばれているそうです。

 

 窮余の策は昆虫

 物理的には手に負えず、科学的に防除するにも円換算で数千億円かかるという試算もあり、ギブアップ状態となったイギリスでは、稙食性昆虫に目をつけ、国際生物的防除研究(CABI,イギリス)と九州大学の昆虫研究室との共同研究で186種の天敵昆虫を調査したと聞いています。

 その結果、日本の北海道から奄美大島まで広く分布する、成虫の体長およそ2mmのイタドリマダラキジラミ(写真は九大HPから)が最も適しているという結論に達したそうです。

 

 この昆虫は幼虫から成虫までずっとイタドリに寄生して茎からその汁を餌として吸い続ける奇特な虫で、そのおかげで日本ではイタドリは大繁殖ができないのだそうです。室内実験ではイタドリを枯死させることができ、他の植物や生態系に影響を与えないということも判明したのです。

 

 そんな結果を受け、イギリス政府は2010年3月にその天敵であるイタドリマダラキジラミを、日本から輸入することを決定しました。窮余の一策として、昆虫の輸入というあまり前例のない手段を選んだのです。

 以来10余年、天敵と期待されて海を渡った小さな昆虫ですが、期待に応える活躍をしているのかどうか気にかかるところです。

 こちらから頼んで輸出をした植物ではないのですが、ちょっと肩身の狭いようなイタドリにまつわる話題でした。

 

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 イタドリは痛み止めの薬用になるからイタドリと呼ばれ、漢字で書くと虎杖です。赤っぽい節が入った茎が虎の縞々に似ているからそう呼ばれます。若芽はスカンポと親しみのある名称で呼ばれもし、原種が分からない程に亜種や別名がたくさんあります。

 それを食す習慣は全国にあるようで、高知県ではきんぴらや煮物として、ほとんどソウルフードのように食べられており、同県の人から聞いたところですと、野菜として普通に店頭で販売されているそうです。   

 人間の都合で好物にされたり迷惑者にされたり、イタドリの方こそ迷惑に思っているかもしれません。(木)

 

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