◆アーチの違い
装飾は安山岩
兵舎や弾薬庫の入り口上部はアーチとなっています。日本語で言えば迫持(せりもち)です。アーチ構成するクサビ形レンガを迫持レンガと呼びます。
頂上部の石はキーストーン(要石)と呼ばれ、猿島の兵舎では安山岩が使われています(写真上)。要石は名前から誤解されそうですが、最も大事なパーツというわけではなく、力学的な大事さはどれも同じです。
兵舎に入る時に要石を下から見上げると、アーチの奥行き一杯“一枚岩”が使われ、がっちりとアーチを支える役割を担っているのが分かります。
弾薬庫との違い
アーチの頂上部に装飾を施すのが西洋の習慣のようですが、和風構造物でも目立つところに意匠を凝らします。人間の考えることというのはところ変わっても左程変わらないようです。
同じレンガのアーチでありながら、その先の弾薬庫(写真下)やトンネルのそれは、兵舎とはかなり趣が異なっています。
安山岩の装飾は居住する兵士へのささやかな心遣いだったのでしょうか。設計者の心根を垣間見るような気がします。
心せいていてはそんな微妙な違いには気がつきません。焦らずゆっくり構えると、思いがけないものが見えてくることがあります。散歩も人生も。(木)