◆連理もどき
長恨歌
専門ガイドコースの途中に奇妙な枝があります。
大きく育ったカラスザンショウの2本の太い枝が、十文字に“融合”しているのです。
在地願為連理枝(地にありては願わくは連理の枝とならん)
白居易の長恨歌にそんな一節があります。
しかし、広辞苑によれば連理とは「木と木の幹や枝が他の木や幹と連なって木理が通じていること」だそうですので、幹が同じこの場合は“連理もどき”とでもいうのでしょうか。
ついでに「連理の枝」を検索してみたところ、京都の下鴨神社の「連理の賢木(さかき)」をはじめ、各地にあるようです。
「比翼の鳥」と同様で想像上の産物と漠然と思い込んでいたので、実際にあると知り、勉強になりました。
あこがれて
長恨歌は平安期の貴族の常識であり、源氏物語など日本文学に大きな影響を与えた長編の漢詩です。
「秋刀魚の歌」で知られ、詩人でもある文豪佐藤春夫は、自らは下戸なのに酒席では、その長恨歌を朗々と詠ったそうです。
昔、そんな詩人の格好良いジレッタント振りにいかれてしまった田舎の高校生がいました。
自らの凡庸を振り返ることもなく、ジレッタントを気取りたいばかりに一生懸命長恨歌を暗唱したそうです。
半世紀以上前の話ですから、その高校生も今頃は歌などすっかり忘れていることでしょう。でも、この枝を見せれば少しは思い出すかもしれません。(木)
2023年12月