◆兵舎と石段
何時もひっそり
ここはいつもひっそりと静まっています。切通しの中程、兵舎とそこから頭上の大砲へ向かう石段です。
明治17年から昭和20年まで100年余。石段は兵士たちに朝に夕に踏みしめられたことでしょう。
太平洋戦争末期、深刻な戦闘要員の不足に陥った軍は徴兵制を大きく拡大、下は満17歳、上は45歳まで、つまり若年層とシニアまでをごっそり招集の対象としました。
当時の日本人の平均年齢は50歳といわれていたことを考えれば、その制度の過酷さがわかる「根こそぎ動員」でした。
想像力と思い出
終戦時の猿島の兵員は記録では約140人。兵士たちの年齢の記録はありませんが、ほとんどが招集兵だったという証言もあります。思えばそれもせつない光景です。
そんな過酷な歴史もコロナ騒ぎもよそにツタは茂りイノデたちが生き生きと葉を広げています。
国破山河在 城春草木深・・・。
想像したり妄想したりできるのは人間の特権です。あれやこれや、想像や妄想を働かせながらゆっくり歩きますと、旅の思い出も一段と記憶に残るものになるはずです。(木)
2021年10月