◆イラクサ
触れると大変
大葉に間違われ易い多年草の植物です。108階段下に小群生がありますが、雑草として時々刈り取られます。
グリムやアンデルセンの童話にも登場するので、名前はよくご存じの方が多いと思います。
葉や枝にあるトゲに触れると痛くて、時にかぶれたような症状を起こします。トゲには蟻(ギ)酸と呼ばれるアリと同様の毒があるのです。
イラクサは蕁麻(じんま)とも書き、蕁麻疹とはこのトゲに刺された時の症状から名付けられたといわれます。
しかし会津から来た方から、この植物の仲間を春先に山菜として食することを教わりました。それどころか、スイスなどではビタミンが豊富な素材として、スープやジャムまで作られるそうです。
記憶の不思議
日本近代詩の父・萩原朔太郎は妻に逃げられ、長女の葉子さんは父の実家(前橋)で祖母と暮らすのですが、そこでの家庭内虐待や孤独をつづった、何とも悲惨で痛々しい自叙伝があります。
その題名が「蕁麻の家」。絶妙な題名に深く納得です。
後年、世田谷の世夜更けの小さな居酒屋にふらっと現れた彼女の意志の強そうな横顔も印象的でした。
音、風景、香り、味覚などから、長い空白の時間を超えて脈絡のない意外な記憶がよみがえることがあります。
ガイドと一緒に島を歩いたみなさんは、猿島から何を思い出すことになるのでしょう。(木)
2023年5月