◆むべなるかな
長寿の霊果
それにしても変わった名前です。ムベのこと。アケビ科のつる植物で秋になるとアケビとよく似た実をつけ、その実は古来不老不死の霊果として知られています。
猿島では108段階段を上り始めて見上げると、高い位置に実が観察できます。見にくい位置にあり、気がつく人はほとんどありません。足元の小鳥が食べ散らかした残骸でそれとわかる程度です。
ムベの葉は幼木のときは3枚、その後5枚となり、成長すると7枚になるので、縁起の良い七五三の木ともいわれています。
天智天皇の一言
滋賀県の琵琶湖のほとり、近江八幡市に残る古い伝説によると、天智天皇が狩りに出かけた折、8人の子を持つ元気な老夫婦に出会い、「汝ら如何に斯く長寿ぞ」と問うたそうです。
老夫婦はかたわらのつるに実った桃色の果実を指し、「毎年秋にこの霊果を食しています」とこたえて差し出しました。
それを食した天皇はいたく満足されたらしく、「むべなるかな」と納得、「そのような霊果なら、以後毎年貢進せよ」と言いおいて立ち去ったそうです。
以来この植物はムベと呼ばれるようになったそうで、今でも天皇家に献上されています。しかし、今でも「むべなるかな」とつぶやきつつ賞味されているかどうかは知りません。(木)
2022年11月