◆定家の執念

 テイカカズラ

 春から初夏にかけ5弁のプロペラの様な白い花をつけ、甘い香りを放つ常緑のつる植物です。猿島でも至るところで見かけますが、花が観察できる期間は短いです。

 この植物の名前は百人一首で知られる藤原定家にちなみます。

 

 定家が忍んで恋した相手は後白河天皇の皇女・式子内親王。現代でも皇室の女性と身分違いの男性との恋はなかなか大変なようですが、この時代も事情は変わらなかったようです。

 定家も貴族だったとはいえ、何しろお相手は皇女ですから。

 

 絶世の美人だったと伝わる内親王と定家との間は、相思相愛だったという説と、叶わぬ恋だったという説がありますが、定家が書いた国宝・明月記からは前者だったと読めるそうです。

 

 男女の仲は微妙

 定家は内親王の死後も忘れることができず、その執念が葛となって式子内親王の墓に絡みついた、という伝説にちなんで名づけられたのがテイカカズラです。

 

 なかなか生命力旺盛な植物で土手や生け垣を覆い隠し、里山では樹木に絡まって大きな木さえこんもりと覆ってしまいます。1000年経ても定家さんの執念衰えず、といったところでしょうか。

 

 男女の関係は他人にはうかがい知れない微妙なもの。“熱愛”もストーカーやセクハラと紙一重です。定家伝説を一途な恋物語と読むか、怖い話として読むか微妙なところです。(木) 

 2021年6月

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