◆島で鬼に会う

 白銀のような綿毛

 鬼女蘭(キジョラン)とは、おどろおどろし名前です。今回は前回当欄に登場したキジョランの再登場です。

 

 この蔓植物、キウイほどの大きさの実をつけるのですが、夏の間は藪の緑に溶け込んでいて、慣れない人が見つけるのは難しいです。

   

 晩秋になると茶色となって縦にはぜます。中からは白銀のように輝く、如何にも繊細なタンポポのような綿毛を持った種子があふれ出し、風に誘われて次々と浮遊します。

 

そのころ注意深く観察すると、枯葉の上や枝にかかった種子を見かけます。触れるとふっと壊れてしまう、とてもデリケートな綿毛です。

 

 振り乱した髪

 写真のような白銀色の綿毛の様子が白髪を振り乱した鬼女のようだ、ということから鬼女蘭と名付けられました。

 

 民俗学者で妖怪研究の第一人者小松和彦氏によれば、鬼の起源は「おに」という大和言葉で、目には見えないけれども人間社会に悪い影響を与えるものを指していたのだそうで、そのうち筋骨たくましくて角があるものだけが「鬼」となり、他は「化け物」となったのだそうです。

 

 その後、それは世を避けて隠れ住む人々であったり、領地を追われた人であったり、被征服者であったりもしたようです。一方の都合で悪者にされてしまったのなら気の毒というしかありません。

 

 そんなことを思いながら白く神秘的に輝く綿毛を見ていると、このような繊細でか弱そうな鬼女ならば、一度親しくお会いしてみたいような気持になってきませんか?(木) 

 2021年2月 

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