波打ち際に
「涓滴(けんてき)岩を穿(うが)つ」。
わずかな滴(しずく)でも落ち続けていれば岩に穴をあけるという意味でたゆまず努力せよという教訓だそうです。
猿島の海辺にはオカリナの様な不思議な石が時々転がっています。この石が転がっているのは波打ち際で、しずくどころか四六時中波に洗われています。どうしてこのような形で穴がいているのか不思議でなりませんでした。
石に穴をあけた犯人は穿孔貝(boring shell)という名のお尻がヤスリ状になっている2枚貝が犯人です。
様々な一生
この貝は尻のヤスリの部分で岩にコジコジと穴を掘り、その岩の中で生涯を過ごすのだそうです。一度穴を掘ると外部に出ることはないばかりか、中で成長して穴より大きくなり出られなくなるのだそうです。
そんなことから、墓穴(ぼけつ)を掘る貝「墓穴貝」と面白く表現する人もいます。なんだか、井伏鱒二の小説「山椒魚」を思い出させるようなエピソードです。
もともと穴は岩や崖に掘られたのですが、砕けて波に洗われ石のようになったのです。
それにしても、知恵を使って地球上を縦横に移動する人類、屋内だけの生活で一生を終える我が家の猫、岩の穴の中しか知らない墓穴貝・・・。しみじみ考えると自然は本当に不思議に満ちています。(木)
2020年11月