◆可愛い発電所
勤続120余年
島に渡って歩き出すと、左手にミニチュアのような可愛い小屋が現れます。明治28年(1895年)に完成した電気灯機関舎と呼ばれた発電所です。モルタルの下はレンガ積みです。
小さな小屋にしては不釣り合いに大きな煙突があるのは、当初は石炭を使った火力発電所だったからです。関東大震災にも耐えて120年以上この小屋の中で発電し続けています。ただ、内部の装置は蒸気タービンからジーゼルエンジンに替わっています、
ここで発電した電気は主として、頂上に設置されていた探照灯(サーチライト)に使われました。夜間の敵の侵入に備えて東京湾をにらんでいたのです。
謎のモルタル
ところでこの小屋、レンガ積みの上からモルタルが1㎝にも満たない厚さできれいに塗ってあります。なぜモルタルを塗る必要があったのか。
1㎝弱の厚みでは補強の役に立ちそうもありません。何時、何のために塗られたのか資料も証言もありません。
「発電所は東京湾に侵入してきた敵艦からは見えない位置にある。でも、航空機が登場すると、赤いレンガは空から見て目立つのでモフラージュに塗ったのでしょう。記録はないが、それ以外には考えられない」
横須賀市の歴史を調べている人はそんな推理をしていました。
レンガの上からモルタルを塗る必要が出てきたということ自体が、艦船から航空機へと戦争の形態が変わったことを雄弁に物語っている、ということでしょうか。(木)
2021年8月