◆赤とんぼ
アキアカネは秋の使者
暑気が一段落した頃、秋を運んでくるのが、一般に赤トンボと呼ばれるアキアカネです。猿島でも、空気が乾き始めると管理棟や展望広場上空に群れて飛来します。
アキアカネは羽化するのは6月頃ですが、すぐ高地などに避暑に行き、涼しくなると里へ下ります。秋が深まるにつれてオレンジ色だった身体も真っ赤な“赤とんぼ”となります。
はざ(稲架)に干された稲束とその上を飛ぶアカトンボ。想像するだけで郷愁を覚える日本の秋の原風景でしょう。
一方で、真夏にも赤トンボを見かけることがあります。実は同じアカネ属にナツアカネというトンボがいます。猛暑の中を舞っていたのは多分彼らでしょう。
環境庁の解説資料によれば、アキアカネは胸部中央にある2本の筋(冒頭写真の赤丸部分)のうち前の黒筋がとがっており、ナツアカネは途切れたような形をしているそうです。
初見前線もあった
気象庁は1953年(昭和28年)以来、お馴染みのサクラ前線と同じようにアキアカネ初見前線も発表していました。
ほかにもツバキ、ツツジ、ホタル、セミなど、計57種目を生物季節観測の対象とし、開花や初鳴きなどを観測していました。
思いがけないものまでが観察対象になっていたのにびっくりです。古来、日本人ほど敏感に、そして繊細に季節や自然と寄り添ってきた民族を他に知りません。
しかし2020年、各地の気象台周辺の都市化などの環境変化のため、それまでの観測対象を①サクラ②アジサイ③イチョウ④ウメ⑤カエデ⑥ススキの6種だけとしました。
私達の日々がだんだん自然から遠ざかるようで、少し寂しい気がします。(木)