B29爆撃機に対抗
ここは昭和時代の口径12.7㎝、2連装高角砲の跡です。対航空機砲を陸軍は高射砲、海軍は高角砲と呼んでいました。昭和の猿島は海軍所管でしたので高角砲です。
口径12.7cmといいますと、その砲弾は一升瓶(直径10.5㎝)より一回り大きいサイズで、重さは約23kgありました。連装砲から毎分24発を発射可能だったのですから、相当な破壊力が期待されたのでしょう。猿島に同じものがもう一基設置されました。
この砲は、旅客機なみの高度1万メートルという高高度を飛来する米軍の爆撃機B29に対抗するために設置されたものです。終戦間際の昭和19年から20年(1944年~1945年)にかけて急遽設置されました。
よく見るとコンクリートの中に貝殻なども混じっています。もう日本全体が資材不足だったのでしょうか、このコンクリートを見るとちょっと切ない気分となります。
時間に触れる
この砲は終戦1か月ほど前の米海軍の空襲に対して使われましたが、B29が飛行する高度1万メートルに届かず、さらに電気系統の故障で動作もままならず、期待されたような存分な働きはできなかったようです。
この砲台に来るとある種の軽い感慨に襲われます。それは弾丸や砲の性能ではなく、胸高の幹回り220cmに及ぶフウトウカズラの絡まる大木です。
昭和20年(1945年)の終戦後に芽生えて成長したのでしょうから、ざっと70余歳というところでしょう。
時の流れは時計で測ることはできても、見ることも触ることもできませんが、ここへきてこの大木の木肌に触ると70余年という年月に掌で触れたような気がします。(木)
2020年12月