アサギマダラ
運が良ければ初夏から初冬にかけて猿島で出会うことができる美しいチョウです。浅葱色(アサギ:青緑色)模様を持つことから、アサギマダラと呼ばれます。
チョウは品詞で分類すると男性名詞ですが、ヒラヒラと優雅に舞う美しさと、気安くは姿を見せない神秘性とあわせ、どうみても「猿島の女王」といった風情です。
小さな生き物たちが鮮やかな体色をしているのは、総じて毒をもっていることを誇示して敵から身を守るための警戒色と言われます。アサギマダラも例にもれません。
チョウの卵は島に自生しているガガイモ科のキジョラン(鬼女蘭)の葉の裏側に産み付けられ、幼虫はアルカロイド系の毒を含んだ葉を餌に成長します。
驚くべき習性
さらに驚くべきはこのチョウの習性です。秋になると日本本土から九州や南西諸島、時には台湾まで渡ります。ざっと2000㎞という距離です。
飲まず食わず、休むところもなく、台湾などは方角の目印もない大海原です。雨や風に遭遇することもあるでしょう。夜昼飛び続けて一体どうやって台湾にたどり着くのでしょう。まったく不思議でなりません。
アサギマダラは日本に広く分布しているといわれますが、首都圏では猿島以外ではあまり見かけません。
しかし、人が住む島として日本最南端の波照間島では、サトウキビ畑の脇のいたるところで、冬でも乱舞しています。
このアサギマダラ、夏が異常に暑くなったのとともに、島で見かける回数が減ってきたような気がします。一時的な現象だと良いのですが、なのかちょっと気がかりです。(木)
2021年1月