◆大トンネル

 文字通りの主役

 猿島にはレンガの構造物がたくさんありますが、このトンネルは圧巻です。島の主役であることに議論の余地はないでしょう。

 

 延長約90m、明治17年完成。工事は軍直轄で工兵が当たりましたが、職人や石工も雇いました。その際は身元を厳しく調べられたそうです。

 トンネルのレンガの積み方は基本的にフランス積みが中心です。これは同国北部からオランダにかけたフランドル地方が発祥の積み方で、正確にはフランドル積みと呼ばれます。

 

 この積み方は明治初期に日本に流行ったのですが、老朽化や地震などで姿を消し、現存するフランス積み構造物は富岡製糸所、長崎のドックなどと合わせて4か所だけとされています。

 

 要塞の“地下本部”

 関東大震災で横須賀市内はもちろん、島の大砲も壊滅的な被害を受けましたが、このトンネルはびくともしませんでした。なぜそんなに頑丈に作られていたのでしょうか?

 

 トンネル内の西側の壁には地下室が付属しています。構造は地下で2階建てになっていて合計12室、指揮所や医務室、弾薬元庫などがありました。

 ここは要塞猿島の地下本部とでも言えるものだったのです。だから頑丈に作られていたのです。

 

 地下室内部は経年劣化で危険のため、一部を除いて内部の見学はできません。モザイク芸術のようなレンガ模様や風の流れなどを楽しみながらゆっくり進んでみましょう。

 

 「トンネルを抜ける」という語感は心地よいものです。その先には何が待っているのか楽しみです。(木)

 2022年1月

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