◆擬礫(ぎれき)

 ちぎれて飲まれて

 猿島は300万年~200万年前は海の底。海底火山の噴出物が堆積、その後隆起したものです。 

 写真は発電所わきの坂を上った右側の露頭です。

 

 崖の下方に見える小石のようなものが擬礫(ぎれき)です。つまり偽の礫(つぶて、小石)というわけです。 

 これら礫は、海底の古い泥岩の地層が、海底地すべりなどの影響で一部がちぎりとられて凝灰岩の地層に飲み込まれ、礫のようになってしまったものです。

 

  上の方に細かいしま模様の層が確認できますが、これは並行層理と呼ばれ、流水の影響を受けて作られた地層です。

 

 海底のドラマ

 夕焼け小焼けだ 大漁だ 大羽鰮(いわし)の大漁だ 浜はまつりの ようだけど 海のなかでは 何万の 鰮のとむらい するだろう

 

 哀しいほどに優しい眼差しで私たちの心に深く残る詩を詠んだのは金子みすゞ。

 みすゞが注いだ眼差しの先の深海では、鰮のとむらい同様決して人間が観ることの出来ない、地層をちぎりとるような激しい地球のドラマが、今も進んでいるのかもしれません。

 

 そして、そのドラマの名残は何百万年後かに地表に現れるかもしれません。もっとも、それを見るべき人類がそのころまで地上に存在しているかどうかは別の問題です。(木)

 2023年11月

次へ

 

一覧に戻る

 

猿島航路の運航状況

渡船料と時刻表など