◆鳶(トビ)

 驚異の視力

 なんといっても驚異的なのはその視力です。人間ですと良くて1.5や2.0ですが、トビは10.0くらいあります。

 あるテレビ局の実験では、50m離れたところの2mmの物体を識別したそうです。

 

 ヒューヒョロロと気流に乗ってのんびり遊んでいるように見えますが、実は抜け目なく下界の獲物を狙っているのです。

砂浜のBBQなど格好の標的で、時には30羽くらいが猿島上空を舞います。

 

 数年前、鎌倉の海岸でコンビニ弁当を開いたとたん、頬をかすめた風とともにとんかつが無くなっていました。

 国際湘南村では手に持っていたアイスを、鷹取山では手羽焼きを奪われました。音もなく背後の死角から襲ってくるのです。

 

 鳶職は町火消

 鳶(トビ)の口ばしに似た鋭い鉄製のかぎを、長い棒の先端につけた鳶口という道具がありまして、この道具を扱う人々を鳶職と呼びました。

 新春出初式で見るように、高い所で鳶のように軽い身のこなしで作業するから鳶職、というわけではないのです。

 

 鳶口の本来の用途は、木材を引き寄せたり動かしたりするための道具ですが、江戸時代は、火事の延焼を防ぐための唯一の方法は、鳶口で風下の家屋を壊すことでした。ですから、その技に優れた「鳶の者」は町火消も兼ねていました。

 

 ちなみに江戸の町火消は歌舞伎で有名になった「め組」など、いろは48組ありましたが、へ・ひ・ら・ん組はありませんでした。

 へは屁、ひは火を連想させ、らはまと並べられない、んは発音し難いと敬遠されそれぞれ百・千・万・本と置き換えて使われました。(木)

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